
セブ島というと、リゾートや青い海を思い浮かべる人が多いかもしれません。
しかし、セブ市の中心部からそれほど離れていないマンバリン地区には、バジャウ族の人々が暮らすコミュニティがあります。
すぐ近くには大型商業施設のSM Seaside City Cebuがあり、村からもその建物を見ることができます。
ここでは、今も海と深く関わりながら、多くの人たちが生活しています。

約3,000人が暮らすといわれるバジャウ村
現在の正確な人口を示す統計は確認できませんが、村では「約3,000人が暮らしている」とよく聞きます。
この地域には大きく2つのバジャウ族のコミュニティがあり、多くの家が密集しています。
家族や親戚同士のつながりも強く、結婚や仕事などをきっかけに、近くの島や別のバジャウ村から移ってくる人もいます。

海の上だけに暮らしているわけではない
「バジャウ族=海の上に住んでいる」というイメージを持つ人も多いと思います。
実際には、この村のすべての人が水上住宅で生活しているわけではありません。
見たところ、水上に建つ住宅は全体の3割ほどです。
ただし、これは単純にバジャウ族が海から陸へ移り住んだ結果ではありません。
この地域では埋め立てによって陸地そのものが広がってきました。
そのため現在は、水上住宅と陸側の住宅が連続するように広がっています。
水上住宅は、海底に竹などの杭を打ち、その上に木や竹、トタンなどを使って建てられています。
家と家の間には細い木や竹の通路があり、そこが村人たちの日常の道です。


満潮と干潮で、村の景色は大きく変わる
同じ場所でも、海の状態によって村の景色はかなり変わります。
満潮になると住宅のすぐ下まで海水が入り、船が家の近くまでやってきます。
一方、干潮になると海底が現れ、泥やごみなども目立つようになり、独特のにおいが強くなることもあります。
海は美しい景色であるだけではなく、ここで暮らす人たちにとって毎日の生活そのものです。

【写真⑥:同じ場所の干潮】
→ 同じ構図で2枚撮れるとかなり強いです。
朝5時ごろ、村が動き始める
村の朝は早く、5〜6時ごろには多くの人が起き始めます。
まずコーヒーを飲み、船を点検する人、仕事や商売の準備をする人、家の前で話し始める人。
音楽もどこかから聞こえてきます。
日中は非常に暑くなるため、外で行う仕事は朝や夕方に進めることが多く、昼になると人通りは一気に少なくなります。
そして夕方になると、村の雰囲気が再び変わります。
子どもたちが外へ飛び出し、大人たちも仕事を再開します。
夕食の準備が始まり、あちこちから人の声が聞こえてきます。
夜8〜9時ごろまではにぎやかですが、10時前になると驚くほど静かになります。
翌朝は、また早くから一日が始まります。



漁だけで生活しているわけではない
バジャウ族は「海の遊牧民」「漁をする民族」として紹介されることが多く、現在も村には多くの漁師がいます。
ただ、現在のセブの村では、漁だけで生計を立てている人はそれほど多くありません。
観光地で手作りのアクセサリーを販売する人、キャッサバなどを売る人、Carbon Marketで商品を仕入れて村の中で販売する人もいます。
若い世代では、バイクで人を送迎したり、中古の携帯電話を仕入れて販売したりする人もいます。
昔から続く漁と、現在のセブの街の中で生まれたさまざまな仕事。
その両方が、今のバジャウ村の生活を支えています。


水道がない村で、どうやって生活しているのか
この村には、日本のように各家庭へ水道が引かれているわけではありません。
水を引くことのできる人が設備を整え、そこから村の人たちが必要な分を購入する仕組みがあります。
水はバケツ単位でも購入でき、料理や洗濯、体を洗うためなどに使われています。
雨が降れば、雨水も食器洗いや体を洗うための貴重な生活用水になります。
飲料水としてボトル入りの水を購入する家庭もあります。
電気もすべての家に直接契約があるわけではありません。
電気を引いている家から親戚や近隣の家へ分けてもらい、その使用料を支払うケースもあります。
限られたインフラの中で、村の中に独自の仕組みが作られています。


子どもたちがとても多い
初めてこの村を訪れた人が驚くことのひとつが、子どもの多さです。
夕方になると、細い通路や家の周りにはたくさんの子どもたちが出てきます。
バスケットボールやバレーボールは特に人気があります。
小さな子どもたちも、自分たちでゴールを作って遊んだり、ゴム跳びやカード遊びをしたり、通路を走り回ったりしています。
中には、小さなお菓子や食べ物を売って、自分たちで商売のようなことをしている子どももいます。



学校もあり、セブの街ともつながっている
村の中には、未就学児が通う小さな学びの場と、小学校があります。
それより上の学校へ進む子どもたちは、村の外へ通います。
買い物や仕事についても同じです。
村の中には小さな商店がありますが、仕入れのためにCarbon Marketへ行く人もいれば、近くの市場で魚や生活用品を購入する人もいます。
仕事のために観光地やセブ市内へ出ていく人もいます。
つまり、現在のバジャウ村は外の社会から切り離された場所ではありません。
セブという大都市のすぐそばで、街と行き来しながら生活しているコミュニティです。


海と街の間で続く、現在のバジャウの暮らし
かつて船で海を移動しながら暮らしてきたことで知られるバジャウ族。
現在のセブでは、その暮らしも大きく変化しています。
水上住宅で暮らす人もいれば、陸側で暮らす人もいる。
漁をする人もいれば、街へ働きに出る人もいる。
水道や電気など十分に整っていないものもあります。
朝になれば人が動き出し、夕方には子どもたちが遊び回り、家族や近所の人たちの声があちこちから聞こえてきます。
昔から続く海とのつながりと、都市の中で変化していく生活。
その両方が存在しているのが、現在のセブ島のバジャウ村です。

